「防災グッズは何を買えばいいの?」——この質問への答えは、あなたの家が直面するリスクによって違います。海沿いの家と山沿いの家では、優先すべきグッズが異なります。築古の木造住宅と新築RCマンションでも違います。
ネット検索すると「必要なもの100選」のような記事が山ほど出てきますが、全員がすべて揃える必要はありません。むしろ「必要度の低いものを買いすぎて、本当に必要なものが漏れる」のが最も多い失敗パターンです。
本記事は、自宅の災害リスクを防災DBで確認した上で、必要度の高い12品を中心に揃えるための実用ガイドです。家族の人数・予算・保管スペースに応じた選び方まで解説します。
この記事でわかること
- 全員絶対に揃えるべき12品(3日分・1人あたり費用1〜1.5万円)
- 自宅リスク別の追加グッズ(地震高リスク・沿岸・低地・山間地)
- 家族人数別の必要数量の計算式
- 3日分 vs 7日分 の判断基準(いつどちらを選ぶか)
- ローリングストックで備蓄を腐らせない方法
- 100均・ホームセンター・通販の使い分け
第1章:全員絶対に揃える12品
どんなリスク環境でも、災害発生から3日間を生き延びるために必要な最小セットです。まずこの12品を、家族の人数分揃えます。
1-1. 水・食料(最重要)
1. 飲料水:1人9L(1日3L×3日)
- 2Lペットボトル×5本/人(500mLも1本)
- 保存水(5〜7年保存)がおすすめ、なければ市販水でOK
- 家族3人なら27L=約13.5kg
2. 非常食:1人9食
- アルファ米(水だけで戻る)5食
- レトルト食品・缶詰 3食
- 栄養補助食品(カロリーメイト等)1食
- 甘味(チョコ・飴)も精神的に重要
1-2. 排泄・衛生
3. 携帯トイレ:1人15回分(1日5回)
- 災害時最初に困るのはトイレ(断水で水洗不可)
- 袋型・吸水ポリマー付きがコンパクト
- 100均でも購入可能だが、国産で凝固剤付きを推奨
4. トイレットペーパー:1人1ロール
- 通常備蓄のローリング使用でOK
5. ウェットティッシュ:1人1パック
- 顔・手・体を拭く用
1-3. 情報・連絡
6. 手回し充電式ラジオ:1台/家
- 電池・手回し・ソーラー・USB充電の多機能型
- ラジオ+LED懐中電灯+スマホ充電の一体型が便利
- 3,000〜5,000円帯で十分
7. モバイルバッテリー:1人1台
- 10,000mAh以上(スマホを2〜3回フル充電可能)
- USB-C対応のものを選ぶ(最新スマホ対応)
1-4. 照明・防寒
8. 懐中電灯:1人1本
- LED型、単3電池使用
- 予備電池を各1セット
9. アルミブランケット:1人1枚
- 軽量で体温保持できる
- 100円ショップでも可
1-5. 救急・衛生
10. 救急セット
- 絆創膏・包帯・消毒液・鎮痛剤・常備薬
- 処方薬は1週間分の予備を常に持つ
11. マスク:1人10枚
- 粉塵・衛生対策
- N95級が理想だが、普通のマスクでも可
1-6. その他必須
12. 現金:家族1万円/人(小銭混ぜて)
- ATM停止・停電でキャッシュレス決済が使えない
- 千円札・500円玉・100円玉を混ぜる(自販機・公衆電話対応)
1-7. 12品の合計費用目安
家族1人あたり1〜1.5万円、家族3人なら3〜4.5万円で12品セットを揃えられます。
第2章:自宅リスク別の追加グッズ
防災DBで自宅住所を入力すると、6種類の災害リスクがわかります。リスクプロファイルに応じて追加すべきグッズが変わります。
2-1. 地震リスク高(震度6弱以上30年確率30%以上)
- ヘルメット・軍手(倒壊ガレキ対策)
- 笛(ホイッスル)(倒壊時の救助要請)
- 靴底の厚いスリッパ(ガラス破片対策)
- 家具転倒防止具(L字金具・突っ張り棒・耐震マット)
- ガラス飛散防止フィルム(未施工なら購入)
防災DBで30年発生確率40%超と出た地域(高知・静岡・徳島・千葉・愛知・神奈川・愛媛・東京など)は、これらの追加を強く推奨。
2-2. 水害・洪水リスク高(浸水想定1m超)
- 大型防水バッグ(スマホ・貴重品を守る)
- 長靴・合羽(復旧作業用)
- 止水板(玄関前に設置、内水氾濫対策)
- 土嚢(20〜30袋、事前充填済みのもの)
東京・広島・岡山の低地、大阪市内の一部など、浸水想定区域内にある家は必須。防災DBで想定浸水深を確認して判断します。
2-3. 津波リスクあり(沿岸部)
- ライフジャケット(家族全員分)
- 防水袋(大)(全家財を一時的に持ち出す)
- 高台避難用リュック(徒歩で30分歩ける軽量版)
防災DBで津波浸水想定深がある沿岸地域(岩手・宮城・高知・静岡・三重・和歌山など)は必須。
2-4. 土砂災害警戒区域内
- 大型ビニールシート(泥汚染からの保護)
- スコップ・バール(脱出用)
- 丈夫なロープ(救助要請用)
山裾・急傾斜地の家では、早期避難が最優先。グッズより避難タイミングの判断が命を救います。
2-5. 軟弱地盤(液状化リスク)
- 防水長靴(噴砂・汚泥対策)
- スコップ(車両脱出・泥かき)
- ビニール袋(大)(汚染物の処理)
東京湾岸・大阪湾岸・河口低地の埋立地など。防災DBでVs30<200m/sと表示される地域。
第3章:家族構成別の追加
3-1. 乳幼児がいる家庭
- 粉ミルク・液体ミルク(最低1週間分)
- 紙おむつ(1日10枚×7日×人数分)
- 離乳食(月齢に応じたもの)
- 赤ちゃん用水(ミネラル分少なめ)
- 保温・保冷グッズ
- お気に入りのオモチャ(精神安定)
3-2. 高齢者がいる家庭
- 常備薬(1週間〜1ヶ月分)
- 入れ歯ケース・洗浄剤
- 杖・歩行器の予備
- 紙おむつ(大人用)
- 補聴器の予備電池
3-3. アレルギーがある人がいる家庭
- アレルゲン除去食(市販備蓄では対応できない場合あり)
- 常備薬(エピペン等)
- アレルギー対応表示付き食品
3-4. ペットがいる家庭
- ペットフード(1週間分)
- ペット用水
- キャリーバッグ・リード
- 排泄処理グッズ
- 予防接種証明書のコピー
第4章:3日分 vs 7日分の判断
「3日分で足りるのか、7日分必要か」は、住んでいる地域の復旧可能性で判断します。
4-1. 3日分で足りる地域
- 大都市圏(東京・大阪・名古屋等)
- 主要幹線道路に近い地域
- 避難所が徒歩圏内(10分以内)
- 3日以内に公的支援が来る可能性が高い
4-2. 7日分を推奨する地域
- 山間部・離島
- 主要道路から離れている
- 冬場の豪雪地帯
- 孤立リスクがあると判定される地域
4-3. 防災DBでの判定
防災DBで自宅住所を入れると、最寄り避難所までの距離がわかります。
- 1km未満:都市型、3日分でOK
- 1〜3km:中間、5日分推奨
- 3km超:山間部・離島型、7日分必須
第5章:ローリングストックで腐らせない
備蓄は「買って終わり」ではありません。賞味期限管理が必須です。
5-1. ローリングストックとは
普段使う食料・水を少し多めに買い置きし、古いものから使って新しいものを足す方法。
- 水:普段使う市販水を段ボール1箱多めに保管
- 食料:カップ麺・レトルト・缶詰を週1回ずつ消費
- 常に3日分以上のストックが維持される
5-2. 期限管理の仕組み
- 購入時にマジックで購入日を書く
- 月1回、備蓄箱をチェック
- 期限が近いものから普段の食事に組み込む
5-3. 買い物習慣の工夫
- 1ヶ月に1回「防災の日」を設け、備蓄を入れ替え
- Amazon定期便でミネラルウォーターを自動配送(賞味期限切れ前に消費)
第6章:100均 vs ホームセンター vs 通販の使い分け
6-1. 100均で揃えられるもの
- アルミブランケット
- ホイッスル
- 懐中電灯(電池別売り)
- 軍手
- 絆創膏・包帯
- 歯ブラシ・歯磨きシート
- コスパ最強、品質も実用レベル
6-2. ホームセンターが適しているもの
- 水(箱買い)
- トイレットペーパー
- 止水板
- ヘルメット
- 携帯トイレ(業務用パック)
- 大量購入・重量物
6-3. 通販(Amazon・楽天)が適しているもの
- 非常食(5年保存アルファ米等)
- 手回し充電式ラジオ(多機能型)
- モバイルバッテリー
- 救急セット(完成品)
- レビュー比較できる専門品
6-4. 予算配分の目安
家族3人の場合:
- 100均:3,000〜5,000円
- ホームセンター:10,000〜15,000円
- 通販:20,000〜30,000円
- 合計 3.5〜5万円で充実した備蓄が揃います
第7章:保管場所と取り出しやすさ
7-1. 備蓄は2か所に分散
- 1か所にまとめると取り出せないリスク(倒壊・火災)
- 持ち出し袋(玄関近く・すぐ持ち出せる)+ 自宅備蓄(押入れ等・3日以上)
7-2. 持ち出し袋に入れるもの(優先)
玄関近くのリュックに:
- 水500mL×2本
- 非常食3食
- 携帯トイレ3回分
- 懐中電灯・ラジオ・モバイルバッテリー
- 現金1万円
- 救急セット・マスク
- 貴重品(通帳コピー・保険証コピー・身分証コピー)
家族全員がリュックの場所を知っていることが重要。
7-3. 自宅備蓄の保管
- 押入れ下段(地震で落ちない)
- キッチン収納(普段目につく場所はローリングストック向き)
- 玄関収納(持ち出しやすい)
第8章:防災DBで自宅リスクを確認する
最後に、自宅固有のリスクを確認する方法を紹介します。
防災DBのトップページで自宅住所を入力すると、3分で以下のデータが出ます。
- 地震:震度6弱以上の30年発生確率
- 洪水:最大想定浸水深・継続時間
- 津波:沿岸地域の想定浸水深
- 土砂災害:警戒区域・特別警戒区域の該否
- 高潮:湾奥部の想定浸水
- 液状化:Vs30・軟弱地盤判定
個別リスクに応じて追加グッズを決めることで、無駄な買い物を避けて、本当に必要なものに集中できます。
まとめ:リスクに応じた賢い備蓄を
防災グッズの揃え方で大事なのは、「全員が同じ備え」ではなく「自分の家のリスクに応じた備え」です。
本記事のポイント:
- まず全員共通の12品を家族人数分×3日で揃える(1人1〜1.5万円)
- 防災DBで自宅リスクを確認、追加グッズを決める
- 家族構成(乳幼児・高齢者・アレルギー・ペット)に応じたカスタマイズ
- 都市型は3日分、山間部・離島型は7日分
- ローリングストックで賞味期限を管理
- 100均・ホームセンター・通販を使い分けて予算最適化
- 持ち出し袋と自宅備蓄を2か所に分散
完璧を目指すより、まず12品×人数から始めることが最良の一歩です。
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データ出典:内閣府「災害時における被災者ニーズ調査」、東京都「東京防災」、総務省消防庁「備蓄の推奨基準」、国土数値情報(国土交通省)、全国地震動予測地図(防災科学技術研究所 J-SHIS)。防災DBの基盤データ詳細はデータソース一覧をご覧ください。