「ハザードマップを見てみたけど、色が何を意味してるのか分からない」「自治体のマップと国のマップ、どっちを見ればいいの?」——ハザードマップの最大の課題は、作られているけれど使われていないことです。
令和2年の防災白書によると、ハザードマップを確認したことがある人は38%、内容を覚えている人は11%。たった1割しか「使える状態」で持っていません。
本記事は、ハザードマップを読める・使える・家族に伝えられるようにするための完全ガイドです。6災害ごとの見方、引越し判断、防災DBでの数値確認まで網羅します。
この記事でわかること
- ハザードマップの種類(6災害)と見るべき優先順位
- 自治体マップと重ねるハザードマップポータルの使い分け
- 色分けの意味(浸水深・危険度・震度ランク)
- 凡例の読み方(想定区域・家屋倒壊・基準水位)
- 引越し・住宅購入での判断基準
- 家族で共有するコツ(子ども・高齢者にも)
- 防災DBで数値として確認する方法
第1章:ハザードマップとは
1-1. 定義
ハザードマップは、災害が発生したときに想定される被害範囲・深さ・到達時間を地図上に示したもの。災害対策基本法・水防法・土砂災害防止法など複数の法律で自治体に作成義務があります。
1-2. 2種類の作り手
国(国土交通省)の重ねるハザードマップは全国で6災害を重ね合わせ表示。各自治体のハザードマップは自治体内の詳細+避難場所情報が加わる。原則は両方確認してください。
1-3. 6災害のハザードマップ
| 災害 | 作成根拠 | 確認要否の目安 |
|---|---|---|
| 洪水 | 水防法 | 必須(全国どこでも豪雨リスク) |
| 内水氾濫 | 水防法 | 都市部・排水路密集地で必須 |
| 高潮 | 水防法 | 沿岸部で必須 |
| 津波 | 津波防災地域づくり法 | 沿岸部で必須 |
| 土砂災害 | 土砂災害防止法 | 山裾・急傾斜地周辺で必須 |
| 地震(揺れ・液状化) | 自治体独自 | 必須(全国どこでも地震リスク) |
| 火山 | 活火山法 | 活火山周辺(監視対象50火山) |
自宅が該当する災害のマップは全部確認するのが原則です。
第2章:重ねるハザードマップポータル
2-1. アクセス
- 全国どの地域でも一括検索可能
- 6災害を重ね合わせ表示
- 無料・登録不要
2-2. 使い方(基本3ステップ)
- 住所を入力(または地図で検索)
- 左サイドバーで表示したい災害を選択
- 地図上の色を凡例で読み取る
2-3. 表示できる情報
- 洪水浸水想定区域(L1計画規模・L2想定最大規模)
- 高潮浸水想定区域
- 津波浸水想定区域
- 土砂災害警戒区域・特別警戒区域
- 道路冠水想定
- 火山ハザード
2-4. 表示できないこと(自治体マップ必須)
避難場所・避難所の位置、内水氾濫(一部のみ)、地震揺れ想定(自治体独自)、地震火災想定、要配慮者利用施設の位置は自治体マップ必須。
第3章:自治体ハザードマップの探し方
3-1. 検索方法
- Googleで「(自治体名)ハザードマップ」検索
- 自治体公式HPにPDF版とオンライン版
- 一部自治体は紙の配布版を全戸配布(活用すべき)
3-2. 自治体マップで特に有用な情報
- 指定緊急避難場所の6災害別指定
- 指定避難所の位置
- 広域避難場所(大都市のみ)
- 要配慮者利用施設(福祉避難所含む)
- 災害時給水拠点
- 緊急交通路
詳細は指定避難所と指定緊急避難場所の違いを参照。
3-3. 見にくい・分かりにくい場合
自治体マップは紙を前提にしたレイアウトが多く、オンラインで見にくいことも:
- PDFをダウンロードして拡大
- スマホではなくPCで閲覧
- 紙の配布版を入手(市役所・役所窓口)
第4章:洪水ハザードマップの読み方
4-1. 凡例の色分け(浸水深)
| 色 | 浸水深 | 危険度 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 薄黄色 | 0〜0.5m | 軽 | 床下浸水 |
| 黄色 | 0.5〜1m | 中 | 大人の腰程度 |
| オレンジ | 1〜3m | 高 | 1階床上浸水 |
| 赤 | 3〜5m | 非常に高い | 1階完全水没・2階床上 |
| 紫(濃い) | 5〜10m | 極めて高い | 2階水没も |
| 深紫 | 10〜20m | 生死に関わる | 中高層ビルも危険 |
4-2. L1(計画規模)とL2(想定最大規模)
- L1:100年に1回レベルの降雨(従来想定)
- L2:1000年に1回レベルの「想定最大規模」の降雨
住宅選びは原則L2で判断。近年の降雨はL1を上回ることが常態化。
4-3. 家屋倒壊等氾濫想定区域
家屋倒壊等氾濫想定区域は、氾濫流で建物が流失・川岸侵食で倒壊する恐れのある区域。2階への垂直避難では助からず、早期の水平避難(市区町村外)必須。色ではなく別凡例で表示されるため、必ず確認を。
4-4. 浸水継続時間
凡例別シートで浸水継続時間も表示:12時間未満(早期水引)、12〜24時間(1日)、1〜3日(中期)、3日〜1週間(長期浸水・在宅避難困難)。長期浸水時は電気・水道・トイレ・食料の問題が深刻化します。
第5章:津波ハザードマップの読み方
5-1. 基準となる想定
津波ハザードマップは、以下の地震の想定津波を表示:
- 南海トラフ地震(静岡〜宮崎の沿岸)
- 首都直下地震(関東沿岸)
- 千島海溝・日本海溝地震(北海道〜三陸)
- 日本海溝型地震(東日本〜北陸)
- 過去の津波履歴(安政東海地震など)
複数の地震で最大値を表示するのが原則。
5-2. 凡例の読み方
| 色 | 浸水深 | 危険度 |
|---|---|---|
| 薄緑 | 〜0.3m | 軽 |
| 黄色 | 0.3〜1m | 中 |
| オレンジ | 1〜3m | 高 |
| 赤 | 3〜5m | 非常に高い |
| 紫 | 5〜10m | 極めて高い |
| 深紫 | 10m超 | 致命的 |
5-3. 到達時間
津波ハザードマップには第一波到達時間も表示:
- 南海トラフ(東海):2〜5分
- 南海トラフ(高知沿岸):数分〜10分
- 日本海溝(三陸沿岸):20〜30分
- 日本海側(新潟〜山陰):1〜5分(近接地震)
到達時間が短い地域ほど、即応避難が命綱。
5-4. 津波避難ビル・タワーの位置
自治体マップには以下も表示:
- 津波避難ビル(既存ビルの4階以上を指定)
- 津波避難タワー(沿岸部に建設された専用構造物)
第6章:土砂災害ハザードマップの読み方
6-1. 警戒区域・特別警戒区域
土砂災害防止法に基づく2段階の区域指定:
| 区域 | 色 | 意味 |
|---|---|---|
| 土砂災害警戒区域(イエローゾーン) | 黄色 | 土砂災害が発生すれば命・身体に危害 |
| 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン) | 赤色 | 建物に損壊が生じ、命に重大な危害 |
6-2. 災害種別・レッドゾーン規制
3種類が表示:急傾斜地の崩壊(30度以上)、土石流(渓流沿い)、地滑り(地面全体の移動)。レッドゾーン内住宅は建築基準法で外壁・開口部の構造強化義務、既存住宅も補強勧告対象、不動産取引時の説明義務あり。イエローゾーン内も避難必須地域で、警報発表時は即避難を。
第7章:地震ハザードマップの読み方
7-1. 複数の情報が重なる
地震ハザードマップは複数の情報で構成:
- 震度分布想定(震度5弱〜震度7)
- 液状化危険度(4段階)
- 地震火災想定
- 倒壊家屋想定
- 人的被害想定
7-2. 震度分布想定
色分けで震度を表示:
| 色 | 想定震度 | 被害 |
|---|---|---|
| 薄黄 | 5弱 | 物が倒れる |
| 黄 | 5強 | 棚から物落下 |
| オレンジ | 6弱 | 壁の亀裂・家具移動 |
| 赤 | 6強 | 建物倒壊発生 |
| 深紫 | 7 | 多数の建物倒壊、地割れ |
震度6弱を境に、建物倒壊リスクが急上昇。
7-3. 液状化危険度
- 危険度A:大規模液状化(埋立地・河川改修地)
- 危険度B:液状化の可能性高
- 危険度C:局所的液状化
- 危険度D:液状化なし
7-4. 想定地震
都道府県・市区町村ごとに想定する地震が異なります:
- 南海トラフ地震(全国広範囲)
- 首都直下地震(関東)
- 活断層地震(該当地域)
- 日本海溝地震(東日本)
第8章:防災DBで数値として確認
防災DBは、ハザードマップの情報を数値データとして確認できます。
8-1. 確認できる数値
自宅住所を入力すると、以下の数値が表示:
- 震度6弱以上30年確率(%)
- 想定最大浸水深(m)
- 津波浸水深(m)
- 土砂災害該否
- 地盤Vs30(揺れやすさ)
- 活断層距離(km)
8-2. 比較・活用
自宅住所のリスクと市区町村平均を比較、都道府県内でのランキングも確認可能。6災害を統合した総合リスクスコア(0〜100)は引越し候補地の比較に最適です。
確認手順:防災DBで住所を入力 → 6災害のリスク値を一覧表示 → 災害別タブで詳細確認。
第9章:引越し・住宅購入でのハザードマップ活用
9-1. 必ず確認する6項目
引越し・住宅購入前に、候補地のハザードマップを6災害全部確認:
- [ ] 洪水浸水深(L2規模で1m以上なら要再検討)
- [ ] 家屋倒壊等氾濫想定区域(該当なら回避推奨)
- [ ] 津波浸水深(沿岸部で5m以上なら回避推奨)
- [ ] 土砂災害レッドゾーン(該当なら回避推奨)
- [ ] 震度6弱以上確率(30%超は耐震重視)
- [ ] 液状化危険度(A・Bは建築工法検討)
9-2. 価格との天秤
ハザードマップ上の危険地域は、一般的に不動産価格が安い傾向:
- L2浸水想定3m以上の地域:周辺より10〜20%安い
- レッドゾーン:周辺より20〜40%安い
- 津波浸水5m超地域:周辺より15〜30%安い
安い理由は「災害リスク」。リスクと価格を天秤にかけて判断。
9-3. 不動産業者の説明義務
- 土砂災害特別警戒区域:宅地建物取引業法で説明義務
- 洪水浸水想定区域:水防法改正で説明推奨
- 津波災害特別警戒区域:説明義務
ただし説明の質は業者により差があるため、自分で確認が原則。
9-4. 賃貸選びでも確認
賃貸物件でも、ハザードマップ確認は有効:
- 洪水で1階水没しそうな物件は2階以上を選ぶ
- レッドゾーンの物件は回避
- 避難場所までの距離・ルートも確認
第10章:家族への共有
10-1. 紙に出力する
スマホで見るだけでなく、A3用紙に印刷して冷蔵庫に貼る。停電・スマホ紛失時にも使えます。自宅の浸水深を大きく書き、最寄り避難場所をマーカーで丸、避難経路を色ペンで、家族集合地点を星マークで書き込む。
10-2. 子ども・高齢者への伝え方
子どもには絵カード・お菓子の色分け(黄色ゼリー=浸水0.5m、赤=3m)、家族お散歩でレッドゾーン確認、小学生は防災マップ作りワーク。高齢者には大きな文字・近所の目印・繰り返し話す。詳細は子どもの防災教育参照。
第11章:ハザードマップの限界と定期更新
11-1. 「想定」である以上、想定を超えることがある
ハザードマップは科学的想定であり、実際の災害は:
- 想定を超えること(近年の豪雨)
- 想定外の場所での被害
- 避難経路が塞がれることも
「マップで安全と出ている」ことは、絶対安全を意味しません。局地豪雨・地盤条件・複合災害で想定を超えます。
以下の姿勢を家族で共有:
- マップは最低限の備えの起点
- 警報発令時は実際の動きを優先
- 自主判断で早期避難を基本に
11-2. 定期的な更新確認
更新頻度:洪水浸水想定区域は5年に1回程度(水防法)、津波浸水想定は新想定発表時、土砂災害警戒区域は基礎調査後、地震ハザードは数年に1回。自治体HPで作成年度・更新年度を確認し、家族マップも更新を。
チェックリスト:ハザードマップ活用度
必須8項目
- [ ] 自治体ハザードマップを入手済
- [ ] 重ねるハザードマップポータルで自宅を確認済
- [ ] 自宅の洪水浸水深を把握
- [ ] 自宅の津波浸水深を把握(沿岸部のみ)
- [ ] 自宅の土砂災害該否を把握
- [ ] 自宅の震度6弱以上確率を把握
- [ ] 最寄りの指定緊急避難場所を把握
- [ ] 家族全員が上記6項目を知っている
推奨5項目
- [ ] マップを紙に出力して掲示
- [ ] 防災DBで数値として確認
- [ ] 年1回マップを見直し
- [ ] 引越し候補地もマップで判断
- [ ] マップ内容を子ども・高齢者にも伝えている
まとめ:ハザードマップは「使って」はじめて意味がある
ハザードマップは作られているだけでは意味がありません。見て・読んで・家族に伝えて・避難経路に反映するところまでやって、初めて命を守る道具になります。
本記事のポイント:
- 国(重ねるハザードマップ) と 自治体マップ の両方を確認
- 6災害(洪水・内水・高潮・津波・土砂・地震)別に読み解く
- 色分け(浸水深・危険度)を凡例と照らし合わせる
- L2想定最大規模・家屋倒壊等氾濫想定区域を見落とさない
- 引越し・住宅購入で必ず確認
- 防災DBで数値として把握
- 紙に出力して家族で共有
今すぐ、自治体ハザードマップと防災DBで自宅のリスクを確認してください。それが家族防災のスタートです。
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データ出典:国土交通省「重ねるハザードマップポータル」、水防法(第14条)、津波防災地域づくり法、土砂災害防止法、活火山法、宅地建物取引業法、内閣府「令和2年防災白書」、国土数値情報(A31洪水浸水想定、A40土砂災害警戒区域、A43津波浸水想定)、地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図」。防災DBの基盤データ詳細はデータソース一覧をご覧ください。